そらみみ −空耳−




まだダメ!



接客の仕事をしていると、お客さまといろんなお話をさせていただける。


今日いらしたお客さまは、教員の職を早期退職され

自宅で三部屋だけの小さな民宿を経営されているとのこと。


朝食付きの宿泊で「儲けにはならないのよ。」とおっしゃりながらも

「だからこうしてのんびりと毎日過ごしていられるんだけど…。」とも。


私は以前から、そこそこ食べていければいいから

とにかくのんびりゆったりと暮らしたいと常々思っており

そのことを話し「うらやましいです。」と言うと

「年をとらなきゃ、ダメよ!」と、笑みを浮かべながらもピシャリと言われた。

その表情と言葉に、彼女が過ごしてきた人生を垣間見た気がした。


そんな彼女への敬意と、自分の未熟さをあっさり認めつつ

「まだ、だめですか。」と笑いながら答えると

「うん、まだダメ!」と笑っておっしゃる。


つらいことや、苦しいこと、思い通りにいかないことなど

もっとたくさんのいろんな経験をすることで

人の痛みがわかり、それが思いやりだったり

やさしさに繋がってゆくのかもしれない。


そして、それを経た後で穏やかでゆったりとした日々を

過ごすことができるのかなー、などと思った。


そういえば…

「しじゅう、ごじゅう(四十、五十)は、ハナタレ小僧」とは、オーナーの口癖。


そして私もまだまだ「ハナタレ嬢ちゃん」である。

2008.4.3記



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