そらみみ −空耳−





ライフスタイル

 



仕事場の近くに飼い猫がいる。
この飼い猫とは出会って2度目には“なじみの関係”になったが
初対面のときには、ひどいことをしてしまった。
 
初めてその猫を見かけたとき、ダークグレイの毛並みのよい姿や、
ゆったりとした動作から、飼い猫だとすぐにわかった。
だが、猫の方は初めて見る私の顔に、警戒心たっぷりの様子だ。

私には、どうも悪い癖があって、警戒心を持った飼い猫を見ると
すぐ、からかいたくなる。
 
しかし、これが捨て猫の場合はちょっと違う。
捨て猫はその姿や行動から、今までどれだけひどい目に遭ってきたか・・
ということが安易に想像でき、とてもからかう気になれない。
 
話が少しずれてしまったがこの飼い猫をさっそくからかうことに。
 
警戒心たっぷりに、様子をうかがいながらゆっくり近づいてくる猫に
こちらも“わざと”今にも襲いかからんばかりの様子で近づく。
にらみ合いを続けながら、お互いの足が止まった。
どちらが先に襲いかかるか、逃げ出してしまうか
緊迫した空気が流れる・・・。


と、そこで私が「降参」とばかりに目をそらし「またね」と猫に言って
その場を立ち去った、というのが初対面の出来事だった。
 
それから数日後に会ったその猫は
私の顔を覚えているのか(?)、先日とは打って変わって
私と目が合うなり「ミャー」と猫なで声で鳴いてきた。
そこで初めてその猫の身体に触れた。
長いしっぽをピーンと立てたお尻を見ると、雌だとわかった。
 
それ以来、私たちはとても“フレンドリーなつきあい”をしている。
 
今日も“彼女”が、停めてあるバイクの座席の上にちょこんと座り
ひなたぼっこをしているところへ、私が近づくのに気づくと、「ミャー」と鳴いてきた。
その声が「やぁー」に聞こえ、ドキッとする。
 
媚びたり、ねだったりする声でなく、あいさつそのものの声で
自然に話かけているようだった。
 
その声に私も思わず「やぁー、どうしてる?」などと、話しかけ
彼女のノドや頬のあたりをなでまわす。

猫は『気まぐれの象徴』として言われるように、はじめは喜んで
気持ちよさそうにしていたが
すぐに飽きて、迷惑そうな顔になる。

「もう、イヤなのね」と苦笑しながら、「またね」と別れた。
 
猫という生き物は、それなりの愛想はあるが
「私は私よ」といったマイペースなところがあり、そこがいい。

その風貌や生き方から、凛とした毅然さを思い浮かべるのは、私だけだろうか。

人と折り合いをつけながら共存しているが、自分のスタイルはくずさない――
そんな猫のように、私も生きていきたい





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